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骨を学ぶ3DソフトBONE(ボーン)
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骨ナビ CGでみる骨の辞書

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*疑問・質問が多い場合は、弊社で選定させていただきます。
骨博士、桜木先生が出来る限りお答えしますが、ご希望に添えない場合もありますのでご容赦下さい。

 

骨博士に聞け (桜木先生へのQ&A)

骨ナビ監修
桜木晃彦 先生
桜木晃彦 先生

骨の3次元形態解析が研究テーマ。解剖学とCGの融合を目指す。

最近ではTV番組「世界一受けたい授業」(日本テレビ系土曜日19時放送中)にも出演。

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骨ナビ監修 桜木晃彦先生へのQ&A

Q. 骨は何でできていますか?

A. タンパク質は骨の「骨組み」です。

人体は、ほとんどがタンパク質の線維からできています。正確にいうと一番多いのは水ですが、それを除くと、タンパク質です。骨もその例外ではありません。私たちはつい単純に、骨はカルシウムでできていると思いがちですが、本当はちょっと違います。骨も生きている素材ですから、生きていることの単位である細胞も存在します。骨の骨組みであるタンパク質の線維にリン酸カルシウムがくっついて、その中に点々と細胞が埋まっているというのが骨の正体です。

骨は、タンパク質の線維で形が作られ、そこにリン酸カルシウムが沈着することによってできています。ビルに例えて考えてみましょう。私たちは普通のビルをコンクリートのビルだと捉えますが、建築家は鉄骨のビルだと考えます。その鉄骨の部分にあたるのが、人体ではタンパク質の線維で、そこにベタベタとリン酸カルシウムがはりつくことで骨はできているのです。つまりタンパク質は骨の骨組みなのです。

じつは、基本がタンパク質の線維でできているというのは骨だけではなく、人体を構成するほとんどの素材がこのような構造になっています。

私が学生たちに人体の一番簡単なイメージを説明するときは、「タンパク質の線維をくしゃくしゃっとメッシュにして、その間に納豆が所々にあり(ワラに納豆がついている感じを想像してください。これが細胞なんですが・・・)、そこに水をたっぷり入れる。これをスジコの毛布でくるんだもの」という表現をします。

ところでみなさん、人体はびっしりと細胞が並んでいると思いがちですが、実はそのような部分は意外に少ないものです。細胞がびっしり並んでいる素材の一例が皮膚の表面、つまり表皮です。また胃や腸の内面、つまり消化中の食べ物が直接当るところなどが、細胞がビッシリ並んだところです。それ以外では細胞と細胞が離れていることが多いのです。細胞と細胞の間はタンパク質の線維その他が埋めています。骨などは細胞と細胞がかなりの距離をとっています。

タンパク質の線維と細胞そしてその他の物質という基本型を保ったまま、からだができ上がるにしたがって、それぞれ個性のある素材になります。カルシウムを沈着させるという個性をもつようになった素材が骨、またそれぞれ変化して別の個性をもった素材が、筋肉や腱そして皮膚の本体である真皮なのです。人体は基本型のバリエーションというかたちで様々な素材でできているのです。

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Q. 骨の3つの働きとは何ですか?

A. 骨は体を支えているだけではありません

骨というと、どうしても体を支えるモノというイメージがあります。もちろんそれも大切な骨の働きのひとつ。体を動かすときに骨のようなしっかりとした硬い支えがないと、クラゲのようにいつもふにゃふにゃしてしまい、敏捷な動きなどできません。

でも骨の働きはそれだけではないのです。私が骨の働きについて授業をするときは、まず「運動・造血・カルシウム」と黒板に書きます。運動は先ほどの「体と動きを支えるもの」ですが、残りは造血とカルシウムです。この2つはどのような働きでしょうか。

造血はその字からもわかるように、血を造り出すということ。骨の中にある骨髄が血液の固形成分を造るのです。血液は人体にとって必要不可欠なもの。大切なものをつくる場所は硬い骨の中にきちんと格納されているという訳です。

そしてカルシウム。骨の中にカルシウムをため込んでいると思っている人もいるかもしれませんが、実は骨自体がカルシウムのストックだといった方が正確です。体を頑丈にするために骨ができたのではなく、カルシウムをためこんでいるうちに硬い部分ができたので、その硬さを利用して運動に役立てていると考えるべきなのです。

ところで、骨のこれら3つの働きを考える前に、第ゼロ番というべき働きがあります。それは骨がヒトのおよそのかたちを決めているということです。人体の基本的なかたちを作っているのは骨です。人体の基本的なかたちとは、痩せているとか筋肉質であるとかではなく、もっと基本です。ヒトには胴体があります。その上に頚(くび)があってまたその上には頭があります。胴体の上の方では、左右の端から腕が伸び出し、腕の先には手が付いています。胴体の下の方では左右の脚が伸び出し、脚の先には足がついています。これらが人体の基本的な形であり、これらはすべて骨によって決められているのです。骨あってこそこの形の人体なのです。

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Q. 骨を強くするにはどうしたらいいですか?

A. 立っているだけでも骨は強くなります。

骨を強くするには、もちろん栄養が最も大切ですが、栄養だけでは丈夫になってくれません。 骨に負荷をかけることが必要です。負荷をかけるというと「激しい運動が必要?」と思いがちですが、そんなことはありません。 ただ歩くだけでも、もっといえば立っているだけでも十分な負荷がかかっているのです。

当たり前のような話ですが、地球には重力があるため、 「立っている」という姿勢を維持するには全身でその力に抵抗しなくてはいけません。 重力への抵抗、その働きの中心的な役割を果たしているのが全身の骨です。 つまり、ただ立っているだけで骨には負荷がかかります。

骨に負荷がかかるとどうなるでしょうか。負荷がかかった骨の中ではふしぎなことが起こります。 その負荷に応じて骨が丈夫になっていきます。骨の中はどこも骨質がビッシリ入っているわけではなく、 多くはスポンジ状、つまり立体の網目状になっています。スポンジといっても軟らかいわけではないのでけっこう丈夫です。 骨質の中ではでたらめに網目を作っているのではなく、かなり規則的に骨梁(骨の中にある梁のようなもの)が走っています。 骨への負荷が大きくなると、この骨梁はどんどん密になります。骨は強くなるのです。 ただ、残念なことに、負荷がかかるとどのようにして骨が強くなっていくかというメカニズムはまだ解明されていません。 その事実だけがわかっているだけです。

解明されていないといっても、わかっていることはあります。例えば、硬い物に負荷がかかると電流が生じます。 ピエゾ電流といいますが、骨にもこの電流が生じているはずです。 電流が生じる方向に沿って、骨梁がつくられていき、骨は丈夫になることが確認されています。 骨の中に埋まっている細胞がこの電流を察知して骨質を増やし、丈夫になるようにしているらしいのですが、 どのように察知し、どのようにしてその方向に骨梁を作っていくのかは、まだ謎のままです。

さて、宇宙飛行士には筋肉トレーニングが欠かせません。 というのは、宇宙空間には重力がないため、骨に負荷がかからず、骨が弱くなってしまうからです。 骨は負荷がかかると丈夫になることは前に述べました。 面白いことに、逆に負荷がかからないと骨はどんどん弱くなります。 地上へ帰還後、筋肉はトレーニングですぐに回復しますが、骨の回復にはかなりの時間がかかります。 宇宙での滞在日数にもよりますが、回復に数ヶ月から一年以上もかかることもあるといいます。 つまり、地上で暮らしている私たちは、重力を相手に知らず知らずのうちに骨を鍛えているようなものなのです。

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Q. 背を高くする方法は? 鎌倉時代の人と江戸時代の人、どちらの背が高い?

A. 栄養不足が解消されて背が高くなりました!?

日本人が戦後、背が高くなったのは戦後の栄養不足が解消されたから、という話があります。つまり、栄養さえ足りていれば、日本人はそれなりに背の高い国民なのではないかということです。戦前の日本人は粗食でした。肉もさほど食べず、せいぜい豆類からタンパク質を取るという程度。食べ物だけが理由とは言い切れませんが、足りていなければ大きくはなれません。

一方、北欧や北ヨーロッパの国には、背の高い人が多くいます。女性でも180cmくらいある人もめずらしくありません。彼らは以前から高タンパクの食生活を、送っていたからではないかと考えられます。

アフリカの草原の人たちは背が高い人も多いですよね。カモシカなどを採って食べているので、案外栄養が豊富なのかもしれません。

ただ、骨の調査でわかったことですが、江戸時代のころ日本人の身長は男性でも150㎝代がほとんどでした。ところが鎌倉時代はもっと背が高かったというデータもあります。栄養だけでいうと、江戸時代の方が動乱の鎌倉時代に比べて人々の暮らしも安定していて栄養がよかったのではないかとも考えられ、やはり一概に栄養だけが身長に影響しているとも言い切れないようです。

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Q. 桜木博士の研究テーマ「骨の3次元計測と腓骨」 について教えてください。

A. 「見ればわかる」ではなく、誰でも納得するデータを。

私が骨に興味を持ったのは、骨の美しさに惹かれたからです。 平面ではなく、三次元の形在るものに興味があったということもあります。

でも骨自体の形や、そのつき方などを正確、かつ科学的に測定し、記載することがこれまではできていませんでした。 たとえば太ももの骨である大腿骨はどのように研究されてきたかというと、 長さや幅などを計測してそれを統計学の手法を用いて解析するという方法です。 大腿骨に限らずヒトの骨は、どれもけっこう複雑な形をしています。 「長さ」といわれてもどこからどこまでの距離を指しているのでしょうか。

たとえ長さを定義することができたとしても、それが果たして骨の形を代表しているのでしょうか。 このように考えると科学的な記載は意外に難しい。 形そのものを対象として研究できないものか、と検討を重ねているのが私の研究です。

人間の体は一人ひとり違います。人体の骨は200個あまりありますが、 それらはどれも複雑な形をしている上、二つとして同じものはありません。 それを統計立てて記載したものができてはじめて、解剖学の研究といえるものになり、 法医学の資料としても使えるようになるのです。

法医学では、女性の骨か男性の骨かを判別するのに、現在ではDNA鑑定を行います。 ところが骨の保存状態がよくないと、DNAがその人のものであるか、はっきりしないという場合もあります。 DNAは万能ではないのです。依然として骨の形から男女の区別をする研究は必要です。 多くの骨が形による男女の判定ができるようにと研究されています。 頭の骨や骨盤は男女の差が大きいところなので、昔からよく研究されています。 また、腕や脚にあるの長い骨は判定がしやすいので多くの報告があります。 でも、長い骨の中でなぜか腓骨(ひこつ)というだけが専門家の間でも謎とされてきました。

ヒトのすねは太い骨と細い骨の2本でできています。そのうち細い方の骨が腓骨です。 従来の方法では腓骨を男女の判定に用いるのは困難でした。しかし私のように骨を専門とする者が見ると、 「男性の腓骨だ」「女性の腓骨だ」と区別できます。客観的に判別できないのは腓骨に男女の差がないのではなく 今までの方法が腓骨に合っていないからではないかと思うようになりました。

そこで、骨は体積も重さもある3次元の立体物であると考え、 従来の研究法を踏襲せずに独自の発想で骨のデータを扱うことにより、 男女の区別を客観的に捉える方法の一つを示すことができました。 この内容は90年代にスイスに本拠があるヨーロッパの学術誌に発表したのですが、 その直後には世界14カ国から問い合わせがありました。腓骨がいかに謎の骨であるかを痛感しました。

腓骨に限らず骨の形を3次元的に扱う研究はまだこれから多くの課題を残しています。 このような研究には、テクノロジーの進歩よりも考え方の進歩の方が重要であるとここ数年考えています。

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